「おい、お前。銀夜、だったな」
那七が出ていった後、しばらくして再び戸が開かれた。
その先にいるのはもう見慣れてしまった男だった。
「はい、そうです!」
男は元気いっぱいに返事をした銀夜を軽く一瞥しただけであった。
「こっちだ」
低い声で短くそういうと、踵を返してしまう。
銀夜は置いていかれないよう、慌てて追いかけた。
しばらく暗い通路を進むと、男は突然立ち止まった。
「これを持ってここに入れ」
そして差し出したのは一本の刀だった。
しかも、入るよう促された先は狭い檻のように見えた。
受け取る事も入る事も躊躇っていると、男は痺れを切らしたようだった。
「さっさとしろ」
刀を押し付けられる形で、檻の中に放り込まれた。
ガシャンッと戸を閉められ、恐ろしくなる。
「あ、あの……!」
「うるせぇな。そこでおとなしくしていろ。――何やればいいかはすぐわかる」
軽く睨むと男は行ってしまった。
銀夜は格子に指をかけたまま、動けないでいた。
この状況に混乱していたのだ。
呆然としていると、突然足元で大きな音がした。
「うわぁ?!」
それは刀だった。
どうやら手からすべり落ちていたらしい。
しかし、今ので我に返った。
とりあえず檻を見回す。
入口以外は格子ではなく、何故か入口の反対側は壁ではなく、戸のようだった。
だが、こちら側から開けることが出来るようでもないので、閉じ込められていることに変わりはないようだ。
落としてしまった刀をとりあえず拾おうと屈む。
「これ……」
なんでかな・・・思っていると、突然入口とは逆の戸が開いた。
その先は今までの薄暗い空間とは違い、明るく、広かった。

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思ったより長くなりそうです。もうしばらく続きます。